メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは、メタボリック症候群、代謝症候群、シンドロームX(Reaven, 1988)、死の四重奏(Kaplan, 1989)、インスリン抵抗性症候群(De Fronzo, 1991)、内臓脂肪症候群とも呼ばれる複合生活習慣病です。内臓脂肪が様々な生活習慣病を引き起こす大きな要因ともなっていることがわかり、近年研究が進んでいます。
おなかの中に脂肪が余分に貯まる「内臓脂肪肥満」に加えて、「高血糖」「高血圧」「高脂血症」のうち、2つ以上の危険因子が加わると、動脈硬化を急激に進行させる可能性が高まります。 このような動脈硬化の危険因子を複数併せ持っている状態を「メタボリックシンドローム」または「メタボリック症候群」と呼びます。あてはまる場合は、動脈硬化から狭心症や心筋梗塞などを発症する確率も飛躍的に高くなります。
危険因子を複数かかえることの危うさは、以前は欧米などで、「死の四重奏」という言葉で言い表されていました。日本でも、約12万人の勤労者を対象に過去10年間の検針データを調べた研究があります。 (厚生労働省「宿主要因と動脈硬化性疾患に関する研究」)この研究によると、危険因子をいくつもっているかという分類で心臓病の発症率を調べた結果、危険因子が見つからなかった健康な人に比べて、危険因子が2つ見つかった場合は5.8倍、3~4つ見つかった場合は3.5倍と飛躍的に高くなっていることが報告されました。
厚生労働省の調査では、高血圧患者数は3,900万人、高脂血症は2,200万人、糖尿病(予備軍を含め)は1,620万人、肥満症は468万人と言われていて、これらの患者は年々増加しています。
メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)の診断基準
動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の危険性を高める複合型リスク症候群を「メタボリックシンドローム」という概念のもとに統一しようとする世界的な流れの中、日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会、日本内科学会の8学会が日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準をまとめ、2005年4月に公表しました。
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メタボリックシンドロームの血糖や血圧の基準値は、一般の糖尿病や高血圧の診断基準よりも少し厳しくなっています。個々の数値はそれほど高い値ではなくても、複数の危険因子が集まれば危険は急に増します。そのため、メタボリックシンドロームでは、血糖や血圧の基準値を病気の予備軍といえるような数値のうちから、警戒するように設定してあるのです。
内臓脂肪が体に悪い理由
血糖値を上げる
血液中の糖は、インスリンというホルモンの働きで利用が促進されていますが、このインスリンの働きを活発化するのが、脂肪細胞から分泌される「アディポネクチン」という物質です。ところが、内臓脂肪が過剰にたまると、アディポネクチンの分泌量が少なくなります。こうしてインスリンの働きが低下して、糖が処理されにくくなります。
さらに、内臓脂肪が多くたまっていると、脂肪は糖の原料になるので、血液中の糖が増加します。しかし、インスリンの働きが低下しているため、糖が十分に使われず、結果的に、血糖値が高くなります。
血圧を上げる
アディポネクチンには、血管を柔軟にして、広がりやすくする働きがあります。しかし、内臓脂肪がたまると、アディポネクチンが少なくなってインスリンの働きが低下することも、血圧を上げる一因になっています。
インスリンの働きが低下すると腎臓の働きに悪影響が及び、ナトリウム(塩分)がうまく排出されません。すると、ナトリウムが血液中に残りやすくなります。人のからだはナトリウムの濃度を一定に保とうとして、血液の量を増やします。すると血管にかかる圧力も高くなって、血圧が上がってしまうのです。
高脂血症をおこす
内臓脂肪がたまると、血液中の中性脂肪も増えます。また、脂質を分解する酵素の働きが弱まり、善玉のHDLが作られません。そのため、中性脂肪が多く、HDLコレステロールが少ない高脂血症を引き起こします。さらに悪いことに、内臓脂肪が多いと、悪玉のLDLコレステロールよりも血管壁に入り込みやすい「超悪玉」の小型LDLコレステロールがたくさん現われます。そのため、動脈硬化がいっそう促進されます。
動脈硬化に直接影響する
内臓脂肪がたまることで、血管壁を健康に保つアディポネクチンの分泌量が減ってしまいます。また、血栓(血のかたまり)を作りやすくする物質も分泌するので、動脈硬化や血管をつまらせる障害を引き起こしやすくなります。
メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)の予防と対策
メタボリックシンドロームの予防と対策に必要なことは、内臓脂肪を減らすことです。しかし、内臓脂肪は、蓄積しにくく減らしにくい皮下脂肪と異なり、蓄積しやすい一方、減らすことも比較的容易なのです。
規則正しい食事を心がけ、食事の量に気をつける。緑黄色野菜を摂る。
摂取カロリーを抑制した食事を取り、三食同じ時間に規則正しく食事を摂る。
運動不足を解消し、運動する(歩くなど)機会を増やす。
体重減少のために、中等度の運動を毎日30分以上(最低10分以上)行う。
禁煙
アルコールを抑える。休肝日を週2回作りましょう。
普段からの心がけとして、動脈硬化を起こしやすい状態のメタボリック症候群にならないようにするには、食事内容に注意を払いながら、体を動かす生活習慣を身に付けておくことが大切ですね。